この谷は昨年2度トライしています。
1度目は右俣右岸尾根を登り1650m付近で時間切れ。 登りの尾根をそのまま滑降。
2度目は同じ尾根の1750m付近で登攀困難となり一旦沢に降り、残り100mを詰めました。
1度目は初めてという事で敗退も言い訳できますが、2度目はなんとか1850mコルまでたどり着きながらも、滑降コースは右俣の1200m付近で登りの右岸尾根にトラバース、尾根を乗り越え弓ヶ洞谷を滑り降りました。「岳人」の記録を見ると、すばらしいスピードで登り三方崩山までも落としています。(3月下旬4月上旬の記録で雪質は異なるとはいえスゴイ!)
「どうして私は2回目に右俣の完全滑降ができなかったのか?」 恥ずかしいのですが右俣入り口のポッカリ口を開けた滝と、圧倒的に立ちはだかる25°〜35°の無木立の白い斜面が怖かったのです。

AM7:40 R156号線からすぐにスキーを履いて林道に入る。昨年はいくらか除雪してあり車でも500m程は入れたようですが、今年は一度に大雪が降った為か、林道の除雪はあきらめたようです。
山スキーヤーには有り難い。
AM8:40 二俣着。 この日は朝から無風快晴。林道を歩いていても大汗をかいてしまう。見通しは良く常に左俣と右俣が見え、ドンドン大きく迫ってくる。今日は勇気を出して右俣入り口のポッカリ開いた滝口の横を慎重に通過。仲間と一緒ならばそうでもないが、一人だと妙に緊張して動作がぎこちない。それでも無事通過でき、昨年よりも大幅に時間を短縮する事ができた。
二俣からの左俣(絶望的な角度で迫る)昨年2人組が取り付いていた。オソロシ!
右俣の斜度は上部に行くほど強くなってくるが、坦々としている分、極端な体力ロスはなく意外にスムースです。
(昨年の右岸尾根の方が登りづらい)
1700m付近迄はなんとか下りのコースを傷つけないよう日陰部分の多い左端を登り、そこからは左手の短い尾根の張り出しに絡み稜線を目指すことにしました。
1750m付近より見上げる右俣のコル
1250m付近より見上げる右俣
稜線までの残り100mはさすがに厳しくなりました。気温もかなり上がってきたのでしょう、日当たりの良い右の山肌から「ザーッ、ザーッ。」と幾度も流れ出し、比較的安全な所にいるとはいえ緊張します。そしてとうとう斜度は40°、膝までのラッセルとなりなした。キックターンもままならず最後のガンバリ所です。
PM0:40 1850mコル着。
東面の展望がスバラシイ! 
この日は遠く立山から北アルプス、乗鞍、御嶽、手前に帰雲山(三角形のガレの上)、猿ヶ馬場、御前岳など荘川の山々が私を迎えてくれました。西面はいくらか木立が遮るものの北部白山が間近に見えます。奥三方岳も近くにあり、何とかして落としてみたいピークです。
1850mコルより東面を望む
奥三方岳(左)と白山北部

いよいよ滑降開始です。
雪質が変化しないよう休憩もそこそこに出発しました。雪崩が心配ですが、ザレ感じのものは有りますが、スパッと切れ落ちるものはありません。意を決して中央の雪屁の切れ間から谷に滑り込みました。上部200mはまだパウダーが、それより下部はブレイカブルとなったものの大したことはなく、私の「破れかぶれのテレマークターン」でも何とか滑りきることができました。
さてもう一度気を引き締めなければなりません。例の滝の横の通過です。
滝がポッカリと口を開けている。
二俣下部より滑降コースを見上げる。
ケイレン寸前の震える足で滝の横を慎重に突破、
二俣にたどりついた時は、念願の右俣滑降の達成感で満たされました。ここでやっとビールを取り出し、今滑り降りてきた右俣をゆっくり眺め、「次はきっと仲間と来よう!」と思いをめぐらせました。
なごり惜しく二俣を後にしましたが、R156まで雪はそれほど腐らず、朝車を降りてから再び車に戻るまで100%スキーが使えました。

近年降雪量が少なくなる傾向は、ここ荘川でも例外ではありません。しかし2月中であればパウダーに出会える確率は高く、もっとルートを探す必要を感じました。

のどかな二俣に別れを告げる。
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