鍋倉山は2005年2月19日の記録をアップしており、今回もほぼ同じコースで頂上にたどり着きました。
ただ、今回7人パーティーの一人が下山開始直後に立木に激突。はずみで左ヒザに大怪我。
尋常な状態ではなく私ともう一人が皆に先んじて下山、警察に救助を要請することに。
痛みは忍耐の内にあり、歩行は出来なくとも両腕でお尻を滑らせ少しずつ下山出来ました。
そして、多くの方々の懸命な救助活動により大きな遭難事故にはなりませんでした。

左ヒザの難しい手術をし現在入院中の友人のことを思うと、この「鍋倉山行」をWebにアップするつもりはありませんでしたが、今回おおいに考えさせられました。
何処かの誰かの何かのヒントになればと思い、自分が感じたことを少し書いてみます。
勿論後からは何とでも言えるのですが・・・。

1.事故直後の判断について。
事故当時私は小1男子と少し下にいて現場の様子は詳しく分かりませんでした。しかし怪我をしたメンバーは頂上から50mも下っておらず、頂上の広い台地はヘリのピックアップポイントに有力でした。
長い距離を動かすこと自体が危険な場合など一番近い救護ポイントだったのです。
結果オーライですが、事故直後にある程度救助活動全体を考え行動開始すべきだったようです。
けがの状態は額に血がにじんでいること、左ヒザは一見しただけでも異常が認められ歩行不可能。
ただその2点を除けば至って元気であった為、カヌーを漕ぐようにして下山を始めたようです。

2.装備について。
負傷者自身が半自力下山可能であったため大袈裟な体勢を取らずとも済みましたが、
私達の力のみで負傷者の身体をコントロール下山しなければならない場合を想像した時、
安全で効率の良い装備の必要性を痛感します。
・スコップは大変有効でした。柄は負傷した左足の添え木となりショベル部はブーツの下でソリに。
跨いでお尻の下に敷くだけでも意外に活躍しました。
・テントシート 私は60X60cmの(片面銀色アルミ蒸着)シートを携行していますが、
100X200cmの大きさがあれば負傷者を包み込み、雪上を搬送しやすくなるように思われます。
また丸めて筒状にすれば負傷ヶ所を固定保護するギプスに。
かさ張りますがとても軽く、ビヴァーク時ツェルトと共にかなり頼りになる装備に。
・細引き10mとシュウリンゲ3本の携行。
以前から渓流釣りに持っていたのですが、ロープの基本的な使い方や結び方など何も知りません。
これから勉強しなければなりませんが、取り敢えずザックに入れました。
私が上手に使えなくとも居合わせた誰かが上手く使えるかもしれません。
・GPSの携行。 経済的に手に入れることが難しいのですが何とかしたいものです。
今回救出方法を検討する際、正確に位置を特定できることがとても重要であることを痛感しました。

複雑骨折をするという状態にも拘わらず大事に至らなかったのは、
救出までのあらゆる要素が整っていたように思います。
風もない快晴の一日でした。
雪は沈み込んでおり登山者のトレースに入れば意外に移動しやすかったようです。
負傷したのはメンバーで一番屈強な者だったこと。
彼は何と標高差500mを2本の腕で下り降りました。誰も真似できません。半自力下山です。
スノーモビル救援の早い到着。
結果、かなりスピーディーに「山」から脱出することが出来ました。
偶然出会った人々の善意はなめらかに連関し、
流れるような救助活動になったことは幸運以外のなにものでもありません。

東海大山岳部OBの皆様、飯山市観光協会「森の家」の皆様、
飯山市温井の有志の方、長野県警飯山署の皆様にあらためて御礼申し上げます。

「PAY it FORWARD」という映画がありました。
当時の私にはピンと来ませんでしたが少しだけ分かったように思います。
いつかこの恩を誰かに渡さなければなりません。

鍋倉山はブナも人も美しい。